ステレオ写真を撮る方法は、大きく分けて3通りあります。
1つは専用カメラを使う方法。ステレオカメラと呼ばれる専用のカメラがあるのです。ただし、街中のカメラ店で簡単にお目にかかれるようなものではなく、見つけたとしてもとても手が出ないお値段でしょう。
一眼レフカメラに取り付けるアダプターもありますが、これも敷居が高いです。
2つ目はカメラを2台並べて固定し撮影する方法。同じカメラを2台用意し、撮影条件を揃えて同時にシャッターを切ることで、ステレオ写真を撮ることができます。
ステレオ写真撮影専用の、デジカメを2台マウントできるステーを造っている会社もあります。(アマダ光機株式会社など)
同時にシャッターを切れるよう工夫することで、動いているものでもステレオ写真にできるという強みがありますが、同じカメラを2台用意しなければならないこと、撮影条件を合わせるのが面倒というデメリットもあります。
最後は、一台のカメラで場所を変えて撮影する方法です。用意するカメラは1台、特別な道具を用意する必要もありません。
ただし、当たり前ですが、2枚の画像を撮影する間にタイムラグが発生するため、動きのある被写体には全く使えません。また、2枚の画像で絞りやシャッター速度と言った撮影条件が著しく異なる場合、不自然なステレオ写真になります。
致命的とも言える欠点は、注意して撮らないと「ずれ」が発生してステレオ画像にならなくなってしまうことです。
しかし、そんな欠点以上に、手軽さでは他の方法を圧倒的に引き離しています。場数を踏めば、割に質の良いステレオ写真も撮影できるようになります。
ここでは、最後に紹介した方法を詳しく説明します。
カメラ1台
これだけです。ただし、ファインダーやモニターにフォーカス枠やフレーミング補助線がある方が簡単にできます。
AFでAEなカメラ(現在流通しているデジカメの大半)の場合は、撮影条件を固定できる機能があると失敗を減らせます。
簡単に言ってしまえば、条件を揃えて右目の場所から1枚、左目の場所から1枚撮るだけです。
ただ、気をつけなければならないことは割と多くあります。ここから先は注意深く読んでください。
何気ない景色でもステレオ写真にすると感動するものですが、被写体の選択を誤ると立体視できないステレオ写真になってしまいます。注意するべき点は、以下の通り。
被写体が動かないこと。
時間をおいて2枚の画像を撮って、それを重ねて見る以上、動いている物体が写真の中に入るとステレオ写真が成立しません。
主題が風景で、空に飛行機が入っている程度であればそれほど気になりませんが、動いているものを主題にすることは不可能です。
大抵の方はファインダーを右目で覗くでしょうから、1枚目は「右目で見た風景の画像」になります。
はじめは例の画像のように、構図を合わせるための目印がわかりやすい被写体がいいでしょう。
フォーカス枠を手動設定で中央に固定して、ダムの中間地点にある向かって右の放水ゲートに合わせます。
目印を合わせる方法はフォーカス枠と決まっている訳ではありません。他に方法があればどんな手段でもいいのです。
ただし、忘れないでください。「左目と右目の視点が交わる点」が必要であることを。この点が「構図を合わせるための目印」であるのです。
次は「左目で見た風景の画像」を撮ります。
ファインダーを左目で覗いて撮影してもいいのですが、画像がずれやすくお勧めしません。デジカメならば、大抵モニターで撮りますしね。
風景のように被写体が遠くにある場合は、左へ小さく一歩(この画像では20cm)移動することでうまく撮れます。
注意する点は、先に述べた通り「目印」を合わせることです。フォーカス枠は中央で固定したまま、ダム中央の向かって右側の放水ゲートに合わせます。
こうして撮ったのが左の見本。上の画像と同じじゃん、と思うかもしれませんが、並べて立体視すればちゃんとステレオ写真になります。逆に言えば、一見全く同じに見えるくらいでなければステレオ写真にならないということです。
移動距離も、ステレオ写真にした時の仕上がりに大きく影響します。被写体までの距離が遠い場合は、移動距離も大きく取った方が遠近感が強調されます。ただし、やりすぎると不自然になります。
近距離では、逆に移動距離を短くします。カメラと被写体が1m程度の場合では、5cm程度で十分遠近感が出ます。
このさじ加減は、実際に何度もトライ&エラーしなければなかなか掴めません。
撮影方法の説明は、以上です。
説明の中で何度も「ずれさせないことが重要」と言っていますが、ずれたらどうなるのでしょうか。
意図的に大きくずらした画像を用意したので、見ていただきましょう。
その1:パンずれ
上の画像を見てください。一目見て水平方向にずれていることがわかります。
この画像で立体視をすると、立体的に見える範囲がとても狭いことがわかります。
このように、パンずれでは画像のうち立体視に使える領域が減ってしまいます。
その2:チルトずれ
上の画像を見てください。一目見て垂直方向にずれていることがわかります。
この画像で立体視するためには、首を左に傾けなくてはなりません。
見方の説明で「上下方向のずれは首を傾けることで修正できる」と書きましたが、ずれがひどいと首が疲れます。
当然ながら左右の画像の重なる範囲が小さくなるので、立体視に使える境域も小さくなります。
その3:ロールずれ
絶対発生させてはならないずれです。
上の画像を見ても、一見何がずれているかわからないかもしれません。
まずは立体視を試してみてください。うまく重ならないのがわかると思います。
立体視に慣れた方や脳の補正能力の高い方なら、不自然ながらも立体視できるかもしれませんが、長時間見ていると頭が痛くなるはずです。
どのようにずれているかと言うと、右の画像は左の画像に対して時計方向に3度回転しています。
ロールずれはフォトレタッチソフトで逆方向に回転させてやれば修正は可能です。ただし、ずれの角度を出すのが困難です。
ロールずれは発生させないに限ります。撮影時の注意点としては、コンパクトカメラでも両手で持つ、脇を締める、足場の安定した場所で撮影する などがあります。
画像を撮ったら、パソコンで取り込むなり現像してプリントするなりしましょう。
フィルムカメラの場合、サービス版がちょうどいいサイズです。大きすぎると寄り目が強くなるために疲れます。
デジカメの場合はパソコンに取り込み、一般的なモニターなら、画像の横幅を320pxから400pxに調整しましょう。
上で説明した通りに撮影している場合は、先に撮影した画像を左に、あとから撮影した画像を右に置き、交差法による立体視を行えばステレオになります。今のデジカメはほぼ例外無く、ファイル名が「ABCDnnnn.jpg」という形式で、nnnnの部分が通し番号になっています。
例えばステレオ撮影した画像ファイルが「DGCM0123.JPG」「DGCM0124.JPG」の場合は、KURI0123.JPGを左に、KURI0124.JPGを右に配置します。