列車の運行が乱れたらどうするのか

列車の運行が乱れるとき

鉄道は時間通りに運行している事が一つの売りです。あの事故以来、無理な回復運転をしなくなったので5分程度の遅れは日常になりつつありますが、それでも10分遅れる事はそうありません。

しかし、毎日平穏無事に列車を運行できる訳ではありません。様々な要因で列車の運行が乱れる事があります。

一番分かりやすいのは、人身事故。とある会社はよくわからない理由で「人身事故」という用語の使用を禁止しましたが、一般的にもよく知られた言葉です。人身事故が発生したら、周辺を走る列車を緊急停止させて、相手者を救護し、警察が現場検証をし、こう言う事をしていると2時間近く運転を見合わせる事も珍しくありません。

また、自然災害で運転を見合わせる事もあります。大雨、河川増水、地震、暴風... 数えだしたらキリがありません。

運転指令所の仕事

列車の運行を指揮統率するのが運転指令所と呼ばれるところです。今は大抵の鉄道会社の路線にCTCが導入されているため、どこにどの列車が走っているのか一目で分かるようになっていて、信号やポイントの制御も運転指令所から直接行えるようになっています。

列車の運転が乱れたとき、運転指令所の最大の使命は、列車の運行を早く正常に戻す事です。

そのために行うのが「運転整理」です。列車の時刻、順序、着発線、待避駅などの変更や運転打ち切り、折り返しなどあらゆる手段で対処します。

次の項では運転整理の一例を紹介します。

ダイヤグラムの説明

列車の運行に関わる説明をする場合、どうしてもダイヤグラムを使わなければ説明できないので、ここでダイヤグラムの説明をします。

ダイヤグラム

ダイヤグラムは、横軸が停車場(駅)、この画像では省略している縦軸が時間です。時間は左から右に流れます。

ここでは、黒い線を普通列車、緑色の線を快速とします。どちらの列車も、A駅からE駅に向かって走ります。

先に発車するのは普通列車ですが、C駅で後から来る快速に追い抜かれます。

列車を表す線の事を「スジ」と言います。快速のスジは普通列車のスジより立っているので、速いことが分かります。

見方、分かりましたか?

ケース1 待避駅と列車順序の変更

では、待避駅変更と列車順序変更を見てみましょう。待避駅変更がある場合は、必ず列車順序変更が発生します。言うまでもありませんが。

例えば、普通列車がA-B間で置石を踏んで車両点検を行った場合。

本来なら灰色の点線の通りに運行できるはずが、車両点検したので黒の実線のように遅れてしまいました。

ここで、快速の待避をダイヤ通りCで行うとどうなるでしょう。快速は普通列車がBを発車した頃にAを発車し、猛烈な勢いで追いかけてきます。普通列車は遅いので、快速はB-C間で普通列車に追いついてしまいます。

線路の上では、当然追い越しはできません。快速は遅い普通列車の後ろを付いていくしか無いのです。

結果としては、ご覧の通り。快速も普通列車も遅れてしまいました。

では「運転整理!」 普通列車の待避駅をBに変更、B-C間は快速、普通列車の順に列車順序を変更します。比較しやすくするため、運転整理を行わない場合のダイヤを細点線で残しておきました。

普通列車はBで快速の到着を待ち、快速を先に行かせます。すると、快速は遅れること無くEに到着できました。

普通列車はCでは到着してすぐに発車すればいいので、運転整理を行わない場合とほとんど変わらない遅れで到着します。

ここで普通列車の遅れを見てみましょう。Bで快速の待避を行ったため、B-C間では遅れがひどくなっています。しかし、Cではもともと快速待避の待ち時間があったため、遅れを戻しています。

本来のスジと実際のスジの横幅が遅れ時間になりますが、C-E間の遅れは車両点検を行っていた時間より短くなっています。

列車の運行が乱れている時に「ただいま○分遅れて運転しています」という放送で遅れが突然ひどくなったりいきなり戻ったりすることがあるのは、こういうことがあるからです。

ケース2 運転打ち切りと折り返し

今度は別のダイヤで説明します。

ここで快速列車は、A-E間を行ったり来たりしています。車両は全て折り返しとします。

列車には必ず列車番号が割り当てられています。豊鉄渥美線の新豊橋8時00分発三河田原行きは81レ、JR飯田線の特急伊那路4号は24Mです。上のダイヤで3101Mと3115Mは下に向かっているので「下り」、3110Mは上に向かっているので「上り」です。

例えば、3101Mの前を走る1091Mが、不幸にもD-E間で人身事故が発生し遅れたとしましょう。運転整理を行わないと、次のようになります。

快速3101Mは、D到着前に事故発生が分かっているため、Dから発車させませんでした。もしこれを発車させていたら、線路のど真ん中で立ち往生することになるのは火を見るよりも明らかです。このような取扱いを「運転抑止」と言います。

運転再開後、3101Mの折り返し3110MはEを大幅に遅れて発車し、その折り返し3115MもAを遅れて発車しています。このダイヤでは折り返しにたっぷり時間を取ってあるので3110Mから3115Mになる時に遅れを戻しています。

しかし、ここまで余裕あるダイヤは普通組めません。

では「運転整理!」 3101MはDで運転打ち切り、折り返し3110Mとする。3110MはE-D間部分運休とする。

どうでしょう。D-E間の列車本数は減りましたが、快速は遅れずに運行させることができました。

しかしこれでは、Eに行きたい人とEから出発したい人にとっては最悪です。もうすこし考える余地はありそうです。次に臨時列車を運転させてみましょう。

ケース3 臨時列車運転

前項のダイヤをそのまま使います。では「運転整理!」 E-D間臨時列車臨9902Mを運転、Dで3110Mに接続。臨9902Mは折り返し臨9901MとしD-E間を運転。

どうでしょう。3110Mは遅れますが、3115Mへの折り返し時間で定刻に戻ります。EからA方面へも、DからE方面へも列車を確保しました。全体的に見てこの案が良さそうです。

運転整理の実際

いかがでしたか。実際にはもっといろいろな手段がありますが、ダイヤを作る気力が無くなってしまいました。例えば上の例で臨時列車を運転するのではなく、3101Mを臨9901Mのスジで走らせ、E駅からは別の車両を出して臨9902M-3110Mとする方法もあります。

ただ、この例で挙げたダイヤは説明のために作った、現代ではあり得ない粗なダイヤです。

実際のダイヤは離れて見ると1枚の色紙に見えるくらいに列車が密で、スーラの点描画状態です。30分も止まれば、後ろにはどんどん列車が詰まっていきます。こんな状態で臨時列車を走らせれば、後になってさらに遅れがひどくなります。

いよいよ立ち行かなくなると大幅な間引きを行い収束を図りますが、そこまですることはそうありません。

運転を見合わせ、運転再開後もなかなか遅れが戻らないと鉄道会社は何をやっているんだと思うかもしれませんが、運転指令所はいっぱいいっぱいなのです。

あと、私自身が運転理論に明るくないので、ここで書いたことは間違いが入っているかもしれません。