ワンマン列車利用の作法

最終更新日:2017年3月25日

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ワンマン列車とは

通常、列車には運転士と車掌が乗務しています。
列車の最前部乗務員室には、列車の操縦をする運転士が、最後部乗務員室には、ドアの開閉や放送、車内秩序維持のための巡回などをする車掌がいます。

名鉄1200系のように、車両構造上車掌が編成中間の車掌室にいる場合や、東海道新幹線のように車掌が3人乗務している場合もありますが、いずれの場合も運転士一人+車掌一人以上の二人以上の乗務員が乗っています。

これに対して「ワンマン列車」とは、乗務員が運転士一人だけの列車を言います。
乗務員が一人だけど言うことで「ワンマン」と言います。
たとえ運転士が女性でも「ワンマン」です。

「ワンマン列車」=閑散線区とは限らない

「ワンマン列車」と書くと、昼間は空気を運んでいるようなローカル線でしか走っていないでしょと思われる方もいると思います。

ところが、東京都23区内でも、名古屋市内でも、大阪市内でも、ワンマン列車は走っています。

意外に思うかもしれませんが、東京ではつくばエクスプレスや東京メトロ丸ノ内線、名古屋では地下鉄桜通線、大阪では地下鉄長堀鶴見緑地線・今里筋線でワンマン運転が行われています。

ワンマン運転の2形態

閑散線区のワンマン列車をご存じの方は、「つくばエクスプレスもワンマン列車」と言われても「それは違うだろう」と感じると思います。

ワンマン列車の形態には、「バス型ワンマン列車」と「都市型ワンマン列車」があります。
「それは違うだろう」と感じるのは、ワンマン列車の形態が異なるためです。

都市型ワンマン運転

つくばエクスプレスや名古屋の地下鉄桜通線、大阪の地下鉄長堀鶴見緑地線などで行われているワンマン運転を「都市型ワンマン運転」と言います。

都市型ワンマン運転は、特別な作法は要求されません。
駅に到着すれば、ホーム側のドアは全て開きます。

利用する側とすれば、車掌が乗務する列車とほとんど変わりません。

都市型ワンマン運転を実施するには、その列車の停車するすべての駅に駅員を配置するか、自動改札機や自動券売機などの機器を揃える必要があります。
名鉄は、蒲郡線と広見線明智-御嵩間を除くすべての無人駅に自動券売機、自動改札機、自動精算機とインターホンを整備し、都市型ワンマン運転を広く導入しました。

バス型ワンマン運転 乗車編

では問題の、作法を知らないと列車に乗ることも降りることもできない「バス型ワンマン運転」です。
これは飯田線(乗務員が二人いないと「何か」あった時に重大な事態になるためワンマンにできない中部天竜-天竜峡間を除く)や高山線など、閑散線区で導入されている「ワンマン」と聞けば誰しも想像するワンマン運転です。

まず駅に着いたら、時刻表で自分の乗る列車がワンマンなのか、車掌乗務かを確認します。

上の画像では、9時32分の多治見行きは車掌乗務、12時07分の高山行きはワンマンです。

ただしすべての列車がワンマン運転の場合は、欄外に「すべてワンマン運転」と書かれていたり、そもそもワンマン運転の記述がない場合もあるので注意が必要です。

自分が乗る列車がワンマン運転であることがわかったら、乗車位置に注意する必要があります。
「先頭車両の後ドア」が入口です。
ホームには「○○方面乗車位置」と書かれた標識や床面標示があるはずなので、それを見つけてその場所で列車の到着を待ちます。

上の画像は太多線の姫駅です。
矢印部分の床面に「ワンマン 多治見方面」の標示があります。
下の画像は拡大です。

列車が到着したら、乗り込みますが、ここでも注意が必要です。

まず、自動でドアが開かない場合があります。
ドア付近に「ドア開」というボタンがあれば、そのボタンを押してドアを開けます。

乗り込んだら、すぐに整理券発行機から整理券を受け取ります。

整理券を取らなかった場合ですが、「きっぷ、整理券のいずれもお持ちでない場合は、始発駅からの運賃をお支払いただくことになりますので、十分ご注意ください。」という放送を行う鉄道事業者もあります。

「整理券を取る」という作法を忘れると、経済的な痛手を負うことになるので、十分注意しましょう。

バス型ワンマン運転 下車編

では、降りる場合の作法です。

次駅放送で「次は○○」と、自分が降りる駅が放送されたら、前の車両の前ドア付近に移動します。

まずは運賃表示器で、支払うべき運賃を確認します。
持っている整理券の番号と運賃表示器の番号を照合し、運賃を確認します。

上の画像の例では、小泉駅から乗車して姫駅で降りる場合の運賃は190円です。

お釣りのいらないように運賃を用意します。
小銭の持ち合わせがない場合は、運賃箱に両替機が付いているので、両替します。
この場合、誤って整理券・運賃投入口や紙幣・乗車券投入口にお札を入れないように注意しましょう。
また、両替できる紙幣は千円札のみです。高額紙幣はあらかじめこわしておきましょう。
高額紙幣しかない場合の取扱いは後述します。

駅に到着したら、運賃箱の整理券・運賃投入口に整理券と運賃を入れます。
この際、運転士が運賃箱前に立つ場合と、運転席に座ったままの場合があります。
運転士がドアを開けたあと運賃箱の前に立つ気配がなければ、運賃箱に整理券と運賃を入れて列車を降ります。

首都圏の一部バス事業者では、運賃投入口に運賃を超える金額を投入するとお釣りが返却される運賃箱を採用している場合があるようですが、鉄道の運賃箱は構造的には神社にある賽銭箱と同じで、お釣りは出ません。
また、誤って過剰な金額を投入した場合でも、運転士は運賃箱を開けることができません。(横領防止のため)
気をつけましょう。

概算収受について

万が一、小銭がなく、千円札もなく、一万円札しかない場合は、「概算収受」という取り扱いになります。

下車時に運転士に一万円札しかないことを申告すると、この場では一万円を支払うように要求されます。
一万円を渡すと、「概算収受票」という紙を渡されます。

この概算収受票には、支払うべき運賃と一万円を預かっている旨が記入されています。
概算収受票に表示された日付を起点に1年以内に、係員のいる駅へ概算収受票を持っていくことで、釣銭を受け取ることができます。

このとき注意しなくてはならないのは、「お釣りを受け取れるのは、万札を預かった事業者に限る」ということです。
例えば、新幹線で富山へ行き、越中おわら風の盆を見るために富山から高山線に乗車し、越中八尾で降りるときに概算収受をした場合、釣銭を受け取ることができるのはJR西日本の駅に限ります。

居住地が豊橋だからと言って、JR西日本発行の概算収受票をJR東海の豊橋駅に持ってきても、釣銭を受け取ることはできません。
釣銭額を預かっているのはJR西日本なので、居住地が豊橋の場合は米原駅まで行く必要があります。

また、運転士が機転を利かせて「お客様の中に一万円札を崩せる方はみえませんか?」と放送で両替できる方を探してくれる場合もあります。
この場合でも地元民からは「列車を遅らせやがって」と冷たい視線を浴びせられることになります。
財布には常に千円札を入れておきましょう。

バス型ワンマン運転でも有人駅では作法不要

バス型ワンマン運転を行っている場合でも、係員のいる駅では、すべてのドアを利用できます。

駅接近時の放送で「まもなく○○です。○○ではすべてのドアが開きます。運賃・きっぷ・整理券は駅の改札口でお渡しください。」と放送されたら、すべてのドアが開きます。
この場合、整理券と運賃は改札口の係員に渡します。

乗る駅が係員のいる駅の場合、当然乗車時には下車駅までのきっぷを持っていることになります。
この場合、乗る駅ではすべてのドアが開き、整理券を受け取る必要はありません。
降りる駅では、きっぷを運賃箱に入れます。

IC乗車券でワンマン列車に乗る場合の作法

TOICA、manaca、SuicaなどのIC乗車券の普及に伴い、IC乗車券でワンマン列車を利用する機会も増えています。

IC乗車券でワンマン列車を利用する際に最も気を付けなければならないことは、「乗車駅も下車駅もIC利用エリアであること」です。
例えば飯田線の場合、TOICAエリアは豊橋から豊川の間です。
IC乗車券で飯田線に乗って三河一宮以北へ乗車した場合は、乗車駅から下車駅までの運賃を現金で支払う必要があります。

乗車駅も下車駅もIC利用駅あであることを確認できた場合、乗車駅では改札機やIC簡易改札機にICカードをタッチして、乗車駅記録をつけます。

列車に乗車する際に整理券を受け取る必要はありません。

列車を降りる際は、運転士にIC乗車券を見せます。
財布や定期入れの中にIC乗車券をしまってある場合でも、運転士に見せる必要があります。
列車を降りたら、改札機やIC簡易改札機にタッチして、運賃を精算します。

駅を出る際のICタッチを忘れると、そのカードは入場状態のままとなり、駅係員の処理を受けるまで使用できなくなります。
注意しましょう。

飯田線の最閑散地区でワンマン運転しない理由の推察

飯田線では、起点側の豊橋から中部天竜間、終点側の辰野から天竜峡間でワンマン運転を実施しています。

しかし、ローカルな飯田線で最も乗車率の低い中部天竜から天竜峡の間は、ワンマン運転を行っていません。

これは飯田線の置かれた状況がそうさせていると推察しています。
つまり、「隣の山が崩落しても影響のないように川の上を迂回させている」渡らずの鉄橋や、かつては落石監視小屋があって線路に異常がないことを常に確認していたなどの厳しい沿線状況が、「ワンマンでは危険だ」と判断させているものと考えています。

実際、2007年には伊那小沢・鶯巣間の線路上に軽トラックほどの石が落下し、落石防護工や電車線や線路を破壊して数日間不通となった事象が発生しています。
落石が発生する数分前には、豊橋行き上り列車が同区間を通過しています。

ワンマン運転では、乗務員は運転士一人です。
一人では、その一人に何かがあれば、乗客を避難させたり、状況を把握したりすることができなくなります。
ゆえに、飯田線の最閑散区間は最も危険な区間であるために車掌を乗せているものと推察します。

豊橋鉄道市内線(豊橋の路面電車)の利用の作法

豊橋の路面電車もマンワン運転ですが、運賃が「一乗車150円」の均一制のため、「前のり中おり」です。

東田を除く電停には安全地帯が整備されているため、乗車方向を確認して乗車位置で待ちます。

列車が到着したら列車に乗り込みますが、ここで運賃を支払います。
IC乗車券の場合は、運賃箱のIC読取部にタッチします。

「次は〇〇」と降りる電停が放送されたら、近くの降車ボタンを押します。
豊橋の路面電車は、電停で降りる人も乗る人もいない場合は、その電停を通過します。

電停に到着したら、車両中央のドアから降ります。
東田電停は安全地帯がないため、列車から降りる前に左右確認をして自動車が来ないことを確かめましょう。