インダイレクトマウント台車

最終更新日:2020年6月14日

ボルスタレス「ではない」台車

JRのインダイレクトマウント台車

前回(とは言っても既に2年近い歳月が流れていますが)は、現在の主流であるボルスタレス台車を解説しました。

ボルスタレス台車を叩くサイトは星の数ほどあれど、純粋に構造を詳しく説明しているサイトはほとんど見つかりません。おかげさまで「ボルスタレス台車」をキーワードにGoogle検索すると、このサイトが上位に表示されるようになりました。

今回はボルスタレス「ではない」、ボルスタ付き台車について解説します。

単にボルスタ付き台車と言っても、ボルスタレス台車以外は(ほぼ)全てボルスタ付き台車になるので、種類は膨大です。

一般的に「ボルスタレス台車」の対となる台車としては「ダイレクトマウント台車」と「インダイレクトマウント台車」がありますが、今回は「インダイレクトマウント台車」を説明します。

これら二つ以外の台車には、代表的なものに「揺れ枕式台車」があります。

構造

実物を見ると、ボルスタレス台車と比べて複雑な構造に見えますが、余計なものを省けばこうなります。

構造

台車の大黒柱「台車枠」、車体の重みを支え衝撃を吸収する「まくらばね」、回転中心となり台車枠と車体を連結する「まくらばり」、まくらばりと台車枠をつなぎ止める「ボルスタアンカ」からなります。

台車枠とまくらばね

台車枠とまくらばね

台車枠に空気バネを載せた状態が、左の画像です。

この状態では、ボルスタレス台車にそっくりです。ただしまくらばね(この画像では空気ばね)の上に枕ばりが乗っかるため、その分台車枠を曲げて高さを低くしています。

この画像ではまくらばねにダイアフラム式と呼ばれる空気ばね(ボルスタレス台車でも使用されるタイプ)を使用していますが、古いものではベローズ式と呼ばれる空気ばねを使うものもあります。

またコンテナ貨車では、まくらばねにコイルばねを使っています。

まくらばりとボルスタアンカ

まくらばりとボルスタアンカ

ボルスタレス台車にはない機構です。

まくらばりは、車体と台車枠(まくらばね)の間にあって、車体の重さを台枠に伝えるとともに、カーブで台車が車体に対して回転する事を許容します。

心皿とは、車体と枕ばりの接合部分です。画像は「大径心皿方式」をモデルとしたので、それで説明します。

心皿は表面が滑らかな金属部分で、車体にも同じものがあります。台車の心皿は中心に穴があいていますが、車体の心皿は中心から棒が出ています。

台車の心皿の穴に、車体の心皿の棒がはまる事で、台車と車体が接合しています。

また、心皿の接触面は潤滑を行いません。枕ばりが軽い力で回転してしまうと、高速走行時に発生する「蛇行動」と呼ばれる運動を抑制できず激しい振動が発生し、最悪の場合は脱線します。この摩擦力の管理が安全上重要と言えるでしょう。

ボルスタアンカはただの棒です。両端をボルスタと台車枠に取り付け、リンクを構成します。詳しくは後述します。

合体

それでは台車枠・まくらばねとまくらばり・ボルスタアンカを合体させます。

組み立て

ボルスタアンカを手抜きしたので「ただの棒」になっていますが、実際は先端は ◎= のようになっています。クルマでいうところのラテラルロッドに働きは似ています。(ラテラルロッドが左右動を抑えるのに対し、ボルスタアンカは前後動ですが)

これによって、上下の振動はまくらばねが吸収し、前後の牽引力・制動力はボルスタアンカがしっかり伝達します。

画像では省略しましたが、左右方向の揺れは左右動ダンパとストッパが抑えます。

完成図をもう一度

それでは完成図をもう一度見てみましょう。

JRのインダイレクトマウント台車

荷重の伝達順序は

  1. 車体
  2. 心皿
  3. まくらばり
  4. まくらばね
  5. 台車枠

牽引力・制動力の伝達順序は

  1. 車体
  2. 心皿
  3. まくらばり
  4. ボルスタアンカ
  5. 台車枠

個人的意見

巷では「ボルスタレス台車が事故を起こす」だとか、悪い噂はいろいろなところで立てられています。

実際、ヨーダンパの無いボルスタレス台車の車両が高速走行するとガタガタと周期の短い横揺れを感じる事があります。これは台車が蛇行動を起こしているためで、あまりに激しい場合には脱線に至ります。

現在の新幹線車両は例外なくボルスタレス台車ですが、これは線路も車輪踏面も高度に管理され、曲線半径が極端に大きい新幹線だから成功していると言えそうです。カーブが少なく蛇行動の発生要因が少ないので、ボルスタレス台車の持つ横揺れ吸収能力が活きているのでしょう。

しかし、カーブが多く、荒れたレールを走行する事もある在来線の場合、ボルスタレス台車だけが最適な選択であるとは限らないと思うのです。現に高速車両では蛇行動を抑えるヨーダンパの装備は必須です。

東京地下鉄(東京メトロ)では10000系でダイレクトマウント台車を採用し、名鉄4000系でもダイレクトマウント台車になっています。名鉄4000系は急曲線が多い瀬戸線専用車両で「急曲線に強いボルスタ付き台車を採用」という説明をしているサイトを多く見ます。

ボルスタレス台車では車体と台車の回転変位を全て空気ばねで受けるため、空気ばねの耐久性に不安があったという事でしょうか。また回転角が大きくなればなるほど復元力も強くなる特性も無視できないのでしょう。

一概にボルスタレス台車が悪いとは言えませんが、適材適所という言葉があるように、ボルスタ付きの台車がもっと見直されてもいいのではないかと思います。